76冊目『きいのいえで』

 

きいのいえで (講談社の創作絵本)

きいのいえで (講談社の創作絵本)

 

「こっそり いなく なりたいから、にわから でて いくって。」

 

双子の妹(な気がする)きいの家出を、どうにかして止めようとするおはなし。

 

割りと完璧な絵本の一つ。形式も凝っていて飽きがこないし、終わり方も素敵。

きいはお母さんに怒られ家出を決意する。遠足のリュックにたくさんの宝物を詰めて、犬のチロや弟にさよならをする。前半部分はきいの物語で、ここだけで小さな女の子にとっての家出が決しておままごとのようなものではないことが分かる。無論後になって振り返ってみればおままごとと変わりないのだろうけれど、当の本人は本気。 本気だからこそ、さよならをゆっくりとなえる。

 

「どうしよう、ほんとうに いっちゃう。ずーっと いっしょだったのに。」

双子の片割れを失うことが耐えられない姉(だと思う)は、お菓子や絵本、続きの遊びや夕ご飯で、なんとか今日を引き伸ばそうとする。

今日が終わるときいとはさよなら。そのなかでとれる作戦は、今日がいかに楽しくて、それを失うことがどれほど寂しいか知ってもらうこと。

「きょうは どうなるのかなあ。」

「きょうは もう……、ね。」

姉の作戦は効を奏して、2人一緒に眠りにつくラスト。前半後半と展開にも工夫があって、読んだあとの満足感が高い絵本だった。なんてことない毎日がかけがえないの。大人はそう言うけれどいまいちピンとこないよ♪……なんですよええ。

 

「あしたには いないよって いってるけど、どうかなあ。」