2015年私的お気に入り絵本15選&総決算

 

年明けの瞬間も迫ってきた大晦日、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

さて、4月からはじめた絵本ブログという趣味も140冊を越え、いったんここで終了ということにさせていただきます。そこで140冊のなかから、これはおすすめ!という本を15冊選んでみました。ぜひ参考にしていただき、これからも続く絵本ライフをご堪能ください。

 

もったいぶっても仕方ないので1位から発表します。というか一応ランキングにはしてみましたが、この15冊に関してはどれを読んでも最高ですし、あなただけの思い出の1冊がそこにあればそれが一番だと思う次第です。僕の一番の1冊はこれでした。

 

1位『化鳥』 

絵本 化鳥

絵本 化鳥

 

 泉鏡花の作品を現代によみがえらせた絵本。これほどまでに“絵本”の形を正確に捉えた作品はもう生まれ得ないと思うし、自分が絵本に求めていた全てが詰まった1冊。

美しい絵とそれに繋がるストーリー。淡々と語っているようで実に多角的な物語は、老若男女誰の心も揺らしてくれると思う。

個人的にも今年は“鳥”という生き物に非常に縁があり、ラストに男の子を助けてくれる大きな鳥は自分の元にもいつか訪れた“愛情”なのだ。忘れていてもある日ふっと思い出す。

いつか大人になった彼らが、古い本棚やひきだしからふたたびこの本を手に取り、その人なりの受け止め方で『化鳥』を記憶してもらえたら、これに勝る悦びはありません。

 

 

2位『あかちゃんがわらうから』

 

あかちゃんがわらうから

あかちゃんがわらうから

 

すぐ近くにある光を忘れてしまわないように、暗く寂しいところでもがくお母さんたちに向けられて描かれた作品。ずっと心にしまっておきたい1冊になった。 

どしゃぶりのなかでうたい、がれきのなかで踊る子どもらは何も分かっていないのではなく、必要だから歌ったり踊ったり、笑うようにしているのだ。希望の形とはこういうものだと教えられたような気がした。出会えてよかったなあ。

「うれしいこと あるよ ここに ぜんぶ あるよ ここに ぜんぶ!

 

3位『ふたりはきょうも』

 

ふたりはきょうも (ミセスこどもの本)

ふたりはきょうも (ミセスこどもの本)

 

がまくんとかえるくんシリーズから1冊。最終巻でもある本作の最後のエピソード、『ひとりきり』が何度読み返しても狂おしいほど好き。

 「ぼくの した くだらない こと みんな ごめんね。ぼくの いった つまらないこと みんな ごめんね。おねがいだから また ともだちに なっておくれよ!」

「ぼくは うれしいんだよ。とても うれしいんだ。けさ めを さますと おひさまが てっていて、いい きもちだった。

じぶんが 1ぴきの かえるだ ということが、いい きもちだった。

そして きみという ともだちが いてね、それを おもって いい きもちだった。それで ひとりきりに なりたかったんだよ。なんで なにもかも みんな こんなに すばらしいのか その ことを かんがえてみたかったんだよ。」

青春映画のようなこの1コマを、初めて物語に触れる子どもに届けられること。これ以上ないほどの読書体験になると思う。最高。

 

4位『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』 

 この絵本趣味がそもそもうさこちゃんから始まったようなものなので、どの本を選ぼうかとても迷ったけれどこの作品に。シンプルなデザインは見易さを、そして奥深いストーリーは分かり易さを追求した本作。

「おとうさんが そこで

 みじかい おわかれの ことばを のべました。

 おばあちゃん ありがとう

 わたしたち みんなに よくしてくださって。

 うさこちゃんにも よくわかる ことばでした。」

死という未知のものに出会ったときの子ども心が、まるで本当の子どもが語っているように描かれる。そしてうさこちゃんには“誕生”のお話もたくさんあり、セットで読むと尚よい。読んでね。

 

5位『だいじょうぶカバくん』

だいじょうぶ カバくん (わくわくライブラリー)

だいじょうぶ カバくん (わくわくライブラリー)

 

 古典ばかりではなく今年刊行されたものにも面白いものはあるぞ。動物園から脱走したカバくんの自由と勇気のお話。表紙のとおり優しい顔したカバくんがとるとんちきな行動に笑わせられるも、最後はちょっとしんみり。自由とはどこにあるのだろう。バカにされがちな毎日だけれど、大丈夫だよカバくん。

くるりと回れ右をすると、どこへともなく、また歩き始めました。

 のそりのそり。ふるさとに帰る道はいつかだれかが教えてくれるだろうという、あわい希望をむねに。」

 

6位『つられたらたべちゃうぞおばけ』 

つられたらたべちゃうぞおばけ (絵本・こどものひろば)

つられたらたべちゃうぞおばけ (絵本・こどものひろば)

 

愉快の極みの1冊。なんなんだよお前、どういう存在なんだ。はい、つられたらたべちゃうぞおばけです。でもほんとに食べるわけじゃありません。 

ちょっと変わったお友達、ぐらいの奴なんだろうけれど、それ以外の時間はどうしてるのか心配。あとストーリーはもちろんのこと、大きく描かれたおばけや友達の顔がずっと愉快。こんなん好きに決まってるだろ。好きです。

「つられたらたべちゃうぞおばけは おかあさんと てをつないで とおくの おうちに かえって いきました。」

 

7位『どんなにきみがすきだかあててごらん』

どんなにきみがすきだかあててごらん (児童図書館・絵本の部屋)

どんなにきみがすきだかあててごらん (児童図書館・絵本の部屋)

 

 兎と月。好き、っていったいなんなのだろう。それはどんな形をしていて、どうすればよどみなく相手に伝わるのか。

「ぼくは、きみのこと、きみのつまさきのさきまで、すきだよ」

前の記事では「親子や兄弟ならこんな回りくどい表現必要ない」って書いたけど、今は親子みたいに“当たり前”の関係だからこそ伝わらないし伝えられないものもあるよなあと思うようになった。物語がその役割を果たしてくれるのなら。

「うん、それはとおくだ。うんととおくだ」

 

8位『きょうは、おおかみ』

きょうは、おおかみ

きょうは、おおかみ

  • 作者: キョウ・マクレア,イザベル・アーセノー,小島明子
  • 出版社/メーカー: きじとら出版
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 大型本
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 今年最後に読んだ絵本。反抗期の子どもを狼にたとえて、その子にとっての“完璧な場所”を目指す。あれ、これひょっとしてマッドマックスなのでは?緑の地?狼は輸血袋?

なんてことはさておきとてもよい本。空想の世界に逃げるのは決して悪いことなんかじゃない。朝目が覚めて、なんか不恰好だなあ、理想と違うなあなんて思うのもまたよし。逃げたって立ち向かったって日々は続いていくのだ。だから今日は、狼。

「おおかみはじゆうがすき、といったので、ふたりでひろいのはらをかいた。」

 

9位『どうするジョージ!』

どうするジョージ!

どうするジョージ!

 

 「自由とは欲望を満たすことではなく、欲望を捨ててこそ得られるもの。欲望にふりまわされている人は自由人とはいえない。」

ジョージに足りない我慢というやつにはこの言葉がふさわしい。ページをめくるたびその突飛な行動に驚かされるが、だからこそ応援したくなるそんな存在のジョージ。

えーー、たべちゃうのーーー!!??

は、ぜひ声にだして読んでみよう。百倍楽しくなることうけあい。

「ぼくはいつでもいいこだよ。いいこじゃなかったことなんてあったかな」

 

10位『カプチーヌ』

カプチーヌ (魔女のえほんシリーズ)

カプチーヌ (魔女のえほんシリーズ)

 

 今年読んだ絵本のなかで一番好きな画風だった。柔らかく、そして女の子が可愛い。女の子が可愛いのがいいと思いました。

物語も魔法を絡めたアリスチックな展開だったのだけれど、何より心を打たれたのがこの本が作者の娘に向けて作られた本であること。こんなに親馬鹿なことはないと思うが、それで面白い本が作れるのだからご愛嬌。

「もしかすると、もしかするとですが、カプチーヌも、みんなに愛されそんけいされる魔女に、なるかもしれません。」

 

11位『アライバル』

アライバル

アライバル

 

 絵本には文章もいらない、アートブックのような作品もある。アライバルは現時点で読める最高峰のそれだと思うのでもうみんな読むといいよ。

今年は絵本と映画を結びつけて考えることが多かったけれど、この作品は『トムアットザファーム』における「訪問者がその場所になじむまでの話」でもあるなあ。化け物造形がとにかく好みだったのでこのぬいぐるみならうちに欲しい。あとは掃除機を使う巨人も恐ろしくて好き。

 

12位『こわいわるいうさぎのはなし』

こわいわるいうさぎのおはなし (ピーターラビットの絵本 6)

こわいわるいうさぎのおはなし (ピーターラビットの絵本 6)

 

「これは、てっぽうをもった おとこのひとです。」

 

13位『まよいみちこさん』 

まよいみちこさん (にじいろえほん)

まよいみちこさん (にじいろえほん)

 

道にまよいまくるみちこさんをコミカルに描いた作品、のはずが迷って訪れる異世界の描写が心底怖い。そこの脱出方法もなんだかもやもやするし、なぜそんなホラー感を足したのか。でも総じて楽しい絵本。友達のアフロが気になる。

 「いつも おもうけど、ちずって あんまり やくに たたないものだよねえ。」

 

14位『まってる。』

まってる。

まってる。

  • 作者: デヴィッドカリ,セルジュブロック,Davide Cali,Serge Bloch,小山 薫堂
  • 出版社/メーカー: 千倉書房
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: 大型本
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 絵本は形や読み方で遊ぶものも多くあり、この作品も実写で撮られた紐が作中のいろんな人々を繋いでくれるという変わった形をとっている。そう考えると絵本には“漫画的な進化”をしたものと“文芸的な進化”をしたものの二つがあるのだと思う。漫画ばかり読んできた十代もそう考えると無駄ではなかった。

「また春がくるのをまってる。」

 

15位『おやすみなさいをするまえに』 

おやすみなさいをするまえに

おやすみなさいをするまえに

 

ぎゃあああ可愛いいい……。

可愛いものをみると可愛いしか言葉が出てこなくなる女子がいますが今の僕がそうです。ありがとうございます。こんな可愛いものを生んでくれた世界に。異常。間違えた以上。

「きょうが おわると あしたが きます

 みんなを むかえる あたらしい あさが」

 

 

 

ということでした。みなさん楽しく読んでいただけたでしょうか。僕はとてもとても楽しかったですよ。

ブログという形をとって絵本を読むことは今年までにしますが、これからも絵本は読んでいこうと思っています。なぜなら絵本の最大の魅力は、読む側の変化に寄り添ってくれるところにあるからです。

来年にはここまで感動してきた絵本に全く心を動かされなくなるかもしれませんし、自分が馬鹿にしてきたものに心酔するかもしれません。でもそれでいいのです。今感じているものが嘘でなければ、あとになって思い返してもそれは間違いではないと。絵本に、ひいては“子どもに向けられたもの”から、自分はそう学びました。

ではまた来世で。