112冊目『ぼくのせかいをひとまわり』

 

ぼくのせかいをひとまわり (児童図書館・絵本の部屋)

ぼくのせかいをひとまわり (児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: マーガレット・ワイズブラウン,クレメントハード,Margaret Wise Brown,Clement Hurd,おがわひとみ
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 単行本
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「ぼくの ほんと、ママの ほん。ぼくの ほんにはね……」

 

“ぼく”こと小さな子どもに見える世界と、パパやママ、大人に見える世界を比べ、“ぼく”の世界を見回すおはなし。原題は『My World』。

 

ぼくの本をめくると、始めのページは暖炉でパパと二人くつろぐところ。更にページをめくるとそこには幾つかのものが描かれている。

「ママの いすと ぼくの いす。ひくい いすと たかい いす。

 ひくくても ぼくの いす。」

この世界は“ぼく”のみている世界で、“ぼく”が所有しているものはママやパパよりも少し小さい。でもきちんと“ぼく” の所有物。

「ぼくの スプーンと パパの スプーン。『おつきさまは つきおとこの ものだって』」

 

カラーで描かれる日常風景と、モノクロで存在する幾つかの“ぼく”の所有物が、ページをめくるごとに次々と並ぶ。前者が家族と共有している世界で、後者が“ぼく”だけの世界。象徴的な文章はまだ続く。

「パパの かわいい ぼく。ママの かわいいのも ぼく。

 ぼくが かわいいのは クマちゃん。」

パパやママと並び立つものもあれば、全く違う方向に向けている目もある。そして「ママやパパに愛されているぼく」からしか見えないものもある。それが子どもの世界だ。

 

並列で描かれているものを愛している自分にとって、この“存在”を並び立つものとして描く本作は心に深く刺さった。原題の『My World』のほうがシンプルで好きだが、最後の言葉は日本語訳のほうがいい。

「ぼくの あさごはん。よいこの あさだ。

 パパの あさごはん。よい あさだ。」

読みはじめたときは、これはずいぶん難解な本に出会ってしまった、と思ったけれど、全てを子どもの視点と考えればすぐになじむようになった。これは“ぼく”の世界だ。ということはつまり、大人になった“ぼく”の世界でもある。大人はわかってくれない。子供はわかってあげない。

 

「この せかい。ぼくの せかい。

 ブランコに のって ぐるっと せかいを ひとまわり。」