132冊目『ハコちゃんのはこ』
「ハコちゃんはねこです。どうしてハコちゃんかというと、はこがすきだからです。」
箱に入りたがる猫、ハコちゃんと一緒に暮らす家族のおはなし。
表紙に見つめられている気がして読んだ。猫がかわいいなんてのは当たり前の話だけれど、その可愛さを表現するのにいくつもの工夫がなされている。一つは箱の種類。どんな箱でも入るハコちゃんは、娘の誕生日、家族でお祝いするために買った誕生日ケーキの空箱にもはいる。箱についた生クリームをちょっと舐めながら、こっちを悪戯そうに向く。
「どんな はこでも はいります。」
家庭に存在する箱はだいたいが、何かの使用後であることが多い。ティッシュボックスはハコちゃん自らが掘り、入ろうとするがさすがに小さすぎて断念。
「まるい はこに はいると まるくなる。」
「しかくい はこに はいると しかくくなる。」
丸い箱はお母さんが帽子を入れるための箱。四角い箱は子どもが金魚を入れようといていた水槽。まあ迷惑な猫だけれど、入りたいのだから仕方がない。家族が暮らすなかに箱があってハコちゃんがいる。ハコちゃんだってもちろん家族だから、そこはハコちゃんの居場所なのかもしれない。
「はいると しかられる はこも あります。」
植えたばかりの植木鉢に入ることは許されていないハコちゃん。それは新芽の居場所だから。
この本で一つ引っかかるところは家族を表現するアイテム。空き箱で何度か酒の空き箱が登場して、それはどうやらお父さんを表すものらしいのだけれど、他にも何かなかったろうか。写真に写るお父さんは至極真面目そうな分、この家族に隠された暗い部分、なんてことを想像してしまった。話は大きくなりハコちゃんにとっての箱を考える。
「ハコちゃんから みると、へやも おおきな はこかもしれません。」
宇宙船地球号みたいな発想だが、ハコちゃんにとっての居場所=箱であるなら、この家がそうであると嬉しい。
「かぜが ふいても、あめが ふっても、ゆきが ふっても、この はこに いれば あんしんです。」
「おおきな はこの なかの ちゅうくらいの はこの なかの ちいさい はこの なか。あったかくて きもちよくて ごーろ ごーろ ごーろ。」
ハコちゃんの可愛さから、生き物にとっての居場所まで思う奥の深い本。箱だけに。はい。絵もあたたかみのある感じで可愛いのでよかった。
「ハコちゃん、ごはんだよ。」