69冊目『ようちえんのおひめさま』

 

ようちえんの おひめさま (講談社の創作絵本)

ようちえんの おひめさま (講談社の創作絵本)

 

「おんなのこたちは、『おひめさまに なりたいなあ』と いつも いいます。おひめさまは あこがれなのです。」

 

幼稚園の園庭にある飛び出す時計が壊れてしまうおはなし。

読む前に考えていたお話と全然違ったけれど、これはこれで可愛らしくてよかった。ようちえんの(おうじさまと)おひめさま、じゃないのかなあとは思う。

 

高いビルに囲まれた幼稚園の姿がなんだか現代的だなあと思っていたら、実在する幼稚園のお話なのね。ということはこの王子様とお姫様が飛び出す時計も本当にあるのだろうか。気になる。

雷に打たれ壊れてしまった時計を直そうと色んな手段を使うが、万策尽きたとき一人の園児がこういう。

 「そうだ、もういちど かみなりを おこせばいいんだよ。 そしたら、とけいが びっくりして うごきだすかも しれないよ」

なんてマッチョな発想なんだ。しかしこれが巧いこと行った、ように見せかけて、文中には出てこないけれど絵の隅のほうでおそらく業者さんが保育士と会話しているところが描かれている。子どもたちは自分たちの力でもう一度雷を起こすことに成功し、そのおかげで大切な時計が直った、と見えているから、これはファンタジーというものがどんな形をしているか、のお話でもあるのではないか。

「おひめさま」というワードが割りと序盤でどうでもよくなってしまったのは残念だったけれど、子どもに見せるファンタジーとしては良い作品だと思う。あーでも少し子ども騙しな気もする。気持ちが朗らかならそれでいいや。

 

「『おひめさま おうじさま おはよう』

 こどもたちは おおきな こえで いいました。」