38冊目『きつねのかみさま』
「みていると、きつねって なわとびにむいていないの。とぶのは うまいけど、しっぽの ふさふさが ひっかかるのよ。あーあ。」
縄跳びを外に忘れた姉と弟が、あることからきつねの神様になるおはなし。
酒井駒子さん何冊目かだけどこの本が一番絵が好き。最近の美人顔のものではなく、目も鼻もうすらぼんやりとしていてなんだか可愛い。ただ狐のほうはデティールが細かくて、可愛さもマスコットというよりは動物。そしてそれもお話とマッチしていて最高。
2人は狐の遊び場に偶然迷い込んでしまい、狐が大縄跳びで遊んでいるところに遭遇する。はじめは隠れていた2人だが、いつしか遊びに混ざり、夕方になればすっかり皆と仲良しに。
絵本といえば子ども向け、そして開いたときのインパクト重視のものが多いのだけれど、自分は「成立しているもの」がやっぱりどうしてか好きらしい。このお話も最後、姉のりえちゃんがきつねの神様になるところがとてもいい。変な言い方をすれば、ちゃんとオチている。そして酒井さんの絵。最近は酒井さんの絵に惹かれて川上弘美さんの『七夜物語』を買ったりもして、そういう惹きつける力もある絵描きの方だなあと思う。
誰もが誰かにとっての神様となりうる。優しさは偶然でもいい。愛はおしゃれじゃない。愛はおしゃれじゃないんです。
「『そうかあ。おねえちゃんは、きつねのかみさまだあ。くくくっ』
けんちゃんといっしょに わらいながら、むねが きゅんと した。」