このマンガが(俺のなかで)スゴい!2014 ベスト5(後編)

 

さてね、さっそく書き出して行きたいと思います。では第5位。

 

第5位Re:まりな

 

Re:まりな 4 (ジェッツコミックス)

Re:まりな 4 (ジェッツコミックス)

 

「彼女の名前は坂本まりな。26年後、危篤状態のオレを救うため、時を越えて押しかけてきた未来のオレの妻。推定Gカップ」

 

えっち漫画の宝庫でありながら『3月のライオン』や『自殺島』などの本格的な作品も取り揃えた最高の雑誌、ヤングアニマル。今年はヤングアニマルから何を選ぼうと悩みましたが、瀬口たかひろ観測史上もっとも打点の高いこの漫画をセレクトしました。

瀬口たかひろ先生といえば、お色気漫画を得意としながらも『死に至る病』や前作の『ゆりキャン』など、高い画力と構成力でいつだって漫画大好きおじさんたちのハートを震わせてきた逸材ですが、ここ数年がもっとも美味しい時期、つまり旬の作家の一人だと思います。今作のヒロインまりなは主人公を甘やかしてくれる、叱ってくれる、駄目なところもあり、そしておっぱいが大きい。こんな女性は嘘だけれど、嘘の幸せとしてはあまりにも幸福に近すぎる。愛に無頓着だった主人公に「愛されることに慣れていって欲しい」と行き過ぎた愛情、表現を食らわす。そしてそんなまりなは未来からきた、将来のお嫁さんなわけです。この設定がとにかく隅々まで行き届いているおかげで、一番楽なところで愛されることが出来る、そして愛せる。

 

知人のいうところの「自分のことが一番好きな女の子が突然現れる系最高傑作」の呼び声高いこの作品が、本家にも俺マンにも相手にされていないことにぼかあ激怒しているわけですよ(そんなにしてない)。何も考えずに読める、けれど何も考えずに作られているわけではないし、何かを考えながら読むことが果たしてそんなにいいことなのか。どっちも漫画で最高だ。頑張れ倫之介。頑張れオレ。

 

第4位ハルロック

 

ハルロック(1) (モーニング KC)

ハルロック(1) (モーニング KC)

 

 

犬神もっこす』で一部読者を、熱狂はさせてないけどぼんやり良い気持ちにさせてくれた西餅先生の新作は、電子工作というニッチな趣味にはまるハルちゃんの物語。しかしただマイナーだったりニッチだ、ということで話を終わらせないのがこの漫画のすごいところ。尊敬できるうに先輩や先生、ハルちゃんを追いかけて電子工作を始める六君、出てくる人皆がそこに息づき、世界を広げようとしている。個人的には「やりたいことがない」現代の若者のような六君が、電子工作を理解することで春ちゃんに近づこうとする様子がとても愛らしくまた心にくる。何を理解したら好きな人のそばにいれるのか。

それはハルちゃんを含む電子工作狂いの人、ないしはすべての趣味人が抱える、どうしたらもっと好きなものの近くにいることが出来るのか、だと思う。そのために自分が作り出したツールやアイテムで世間に対して交流を仕掛ける。そしてその最たるものが、次巻で取りざたされるであろう猫ツイッターであり、そこからの起業という流れなのだろうね。すごいです。一見すごくなさそうな絵柄だったりテンポなのだけれど、とても熱いことをやっている。1位ですよ何を言ってるんですか。

 

「ゆっくり進む者が一番遠くまで行くって言葉があるだろ。お前はきちんと理解しようとしている。そういう歩みの遅い人間が案外一番遠くまで行くんじゃないかな」

 

 

こっからはもう順位にほとんど意味はない(全てが一位級)けども、もったいないので順位付けで発表します。

 

第3位子供はわかってあげない

 

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

 

 本家このマンガがすごいでも3位に輝いたこの作品にもはや説明は必要ないと思いますがそれでも読んでないというあなたに説明するとすれば、ラブコメというマンガ界にありふれたジャンルで、マンガでは描かれたことのなかった“交換”の話を繰り広げた作品です。

その話の妙、だんだん癖になるキャラの造詣、そして練りに練られたであろうタイトルとその表紙の美しさ。アマリリスのときに「漫画としてこれを越えるものは10年出ない」と書きましたが、『子供は分かってあげない』は芸術作品でこれを越えるものは10年出ないと思われます。出るのだとしたら日本の漫画界が面白すぎるということ。みんな漫画読もう。

一見して例えば芸術によった漫画なのかな、と思われるかもしれませんが、そうではなく普通に読みやすくてその上面白いです。でもそれだけではない。面白さのすごいところって、面白いだけでは終わらないところにあったりすると僕は思っているんですが、この作品はほんとにそうで、何度読み返しても新しい発見があります。そのあたりは、上質な日本映画をみてるようでもありますね。

お気に入りは海辺での「こっち見んな!」と、暴れ馬のエピソード。おそらく今年自分が選んだ十本のなかで一番万人に受けるものだと思うので、今まで挙げた作品がどうも肌にあわねえ、つまんねえって人もこの作品だけはぜひ。

 

「世界に必要なのは自分にしかない力、じゃない。誰かから渡されたバトンを次の誰かに渡す力、それだけだ」

 

 

第2位忘却のサチコ

 

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

 

 

また「あいつだけが興奮してるよマジダッセ」って言われてもいい。

『忘却のサチコ』が!!!!!!!!!

第1巻が出たばかりの『忘却のサチコ』が!!!!!!!

好き……。

 

お話はザッツシンプル、男に捨てられたサチコさんが彼を忘れるためにいっぱい美味しいものを食べるぞ!というぱっと聞きクソ女みたいな精神。

ではなぜ僕がこの漫画を愛しているのか。それはずばり、作中にあふれる“誠意”です。おかしいほど真面目なサチコさんが、笑っちゃうくらい真面目に、美味しいものを探しに行きます。そしてその食べ物にも真摯に、作ってくれた相手にも誠意を通し、その結果忘却に至ることが出来るという、至極全うなプロセスで動く。そこにはあっと驚く展開も、えっちな顔でフランクフルトをほおばる女子も出てきません。サチコさんは仏のような顔で食べ、そして忘れるのです。

第一話が載ったスピリッツから、初めてスピリッツを購入し、そして現在も購読しています。忘れるためだけの単純な物語が、自分の趣味の幅を広げてくれた。『パパがも一度恋をした』のころから好きではいましたが、僕がもっとも好きなグルメ漫画というジャンルでこうも花開いてくれるとは思ってもみませんでした。最高です。1位です。

ちなみに、今年はグルメ漫画のあたり年でもあったなあ、というか毎年大当たりなのかもしれないと思っています。『甘々と稲妻』や『いつかティファニーで朝食を』等、あとドラマでよくグルメ漫画の実写化がありましたね。サチコもやろうと思えば出来るのでしょうが、まあ私的には大丈夫です。大丈夫ですってば。

 

 

では栄冠の第1位。夏ごろに1位に決めて、そこからたくさんの素敵な漫画に出合い、少しずつ考え方も環境も変わりましたが、やっぱりこの作品が、今年を代表する漫画作品でした。

 

第1位ソラミちゃんの唄

 

 

ソラミちゃんの唄 (1) (まんがタイムKRコミックス)

ソラミちゃんの唄 (1) (まんがタイムKRコミックス)

 
ソラミちゃんの唄 (2) (まんがタイムKRコミックス)

ソラミちゃんの唄 (2) (まんがタイムKRコミックス)

 

 

ひきこもりの女の子、ソラミが奏でる自分の世界のためだけの唄。

話したいことがいっぱいあります。心を変えられなかった、扉を壊せなかったことが多々あります。

「これから作る新しい唄で、今まで私の唄が好きだった人をガッカリさせちゃうこともあるのかな」の言葉をずっと考えています。何冊買っても分かった気になれず、結果1、2巻それぞれに4冊ずつ買い色んな人にばらまきました。なんというか、自分は友達も恋人もいない学生生活だったけれど、もし中学のころに友達がいたらやっていたであろう、「自作のカセットテープ、またはMDをプレゼントする」みたいな気分です。それこそ自分のこっぱずかしい唄だったかもしれません。あこがれたあの唄だったのかも。だからこんなに惹かれているのかも。

「あなたの曲を好きになったから今の私があるのよ。私の世界を広げてくれてありがとう」の言葉をずっと考えています。考えては読み、読んでは考えて、色んなことを決めるときの基準にしたりしています。少し芝居っぽいところも萌えマンガみたいに簡単なところも今ではそんなものかと受け入れています。人生は4コマ漫画みたいだ。

おかしくて可愛くてちょっとうざくて切なくて。変わらないのだと思っていたらすぐに終わりはくる。一曲の名曲みたいな漫画でした。たぶん一生好きです。

 

ということで書いてるうちに賢者タイムを迎えたみたいな終わりかたでしたがいかがでしたでしょうか。ちなみにトップ10を並べてみると、

 

1位 ソラミちゃんの唄

2位 忘却のサチコ

3位 子供はわかってあげない

4位 ハルロック

5位 Re:まりな

6位 アマリリス

7位 フラグタイム

8位 ちーちゃんはちょっと足りない

9位 佐久間まゆをトップアイドルにしないと俺が殺される

10位 生まれる価値のなかった自分がアンナのためにできるいくつかのこと

 

となりました。今の自分的にはランキングに満足しているのですが、明日目が覚めたらあれがよかったこれがよかった言い出すので油断もスキもありません。こちらに確実な証拠を残しておいて、明日の自分を困らせてやろうと思っています。

 

それでは長くなりましたが以上で2014年の漫画ランキングとさせていただきます。長らくのご愛読ありがとうございました。はらひろ先生の文章が読めるのはきっとTwitterのほうが多いぞ!ありがとうございます。