133冊目『ぼくと弟はあるきつづける』
「あの ながい旅から、一年が たちました。」
戦争で親と離れ離れになった兄弟が、旅の末難民の街に辿り着くおはなし。猫の顔だけどうしても笑ってしまう。
戦争を題材にした絵本は多いがそのなかでも子どもの視点がよく表現されていていい本。ちなみに今作はシリーズものでこれは三作目。親と離れて旅を続けていた兄弟がようやく親と再会するのがラスト。
前作でおじいちゃんの家に辿り着き安息の一年を過ごすも、すぐにおじいちゃんは亡くなってしまい途方に暮れる。
「おじいちゃんが なくなりました。これから どうしたらいいですか?いつ むかえにきてくれますか?でも、ぼくたちは げんきでいます。しんぱいしないでください」
そんななか、おじいちゃんの残した遺産を商品に換え、商売を始めようとする兄弟。最初は上手く出来なかったけれど、だんだん軌道にのりはじめた頃、お父さんから手紙が届く。
「もうすぐ このたたかいも おわる。停戦になったら、さいしょの船で おまえたちを むかえにいく。それまで エルタンを たのむよ。」
ある日いつものように商売をやっていると、男の子と女の子の難民に遭遇する。彼らは彼らだけで、この戦争のなか、村を作っていた。
「ようこそ!ジャバル・アルスンへ」
「ことばの山、っていうなまえの 村よ。いろんなことばをはなす人が すんでいるの。みんな、あちこちの国や地方から きているのよ。」
兄弟はそこで一緒に暮らすことにした。ここには戦争も貧困もなかった。あるのは違いと生活だけ。
「ぼくたちのそだてた作物が たくさん みのりました。」
春になり兄弟はすっかり村の住人に。ながいあいだ会っていない親の顔を思い出せなくなるくらいのときが流れた。
「ねえ、おにいちゃん。あの花、母さんのにおいがするよ」
これ以上忘れないように二人で父さんと母さんの似顔絵を描いた。ここがこのお話でもっとも美しく、もっとも悲しいシーン。花はピンクで春はハッピーだけどだからこそ会えないことは辛い。
「たぶん、お父さんもお母さんも、ぼくたちのこと わからないぐらい、大きくなったよ」
兄弟に再会のときが訪れて本当に良かった。会えないまま、苦しいまま終わる戦争なんて何も珍しくない。それでも兄弟は歩き続ける。最後は子どもに優しい本でよかった。
「この旅にでて はじめて、ぼくの目から、なみだが こぼれました。」