62冊目『おやすみなさいフランシス』

 

おやすみなさいフランシス (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

おやすみなさいフランシス (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

 

「おとうさんは、フランシスに、おやすみなさいの キスをしました。

 おかあさんも、フランシスに、おやすみなさいの キスをしました。」

 

眠れない女の子、フランシスがたくさんの不安に遭遇し、朝を迎えるおはなし。

絵本のなかでは割りと古典とされているものも読もうとして読んだ。当たり前みたいに良いな。

眠れなくなったフランシスは椅子を大男だと思ったり、天井から何か得たいの知れないものが堕ちてくるんじゃないかと思ったり、不必要な不安を自分から作り上げ、どんどん夜の迷路に落ちていく。夜の迷路とは思考の迷路だ。考えるからこそ人は寝れないし、そして寝ることで考えをリセットできる。子どもに寝ることを半ば強制しているように見えるお母さんお父さんは、そんなリセットをフランシスにしてほしいのだ。次の朝、また新しいことを考えられるように。

 

“仕事”という言葉が頻繁に出てくるページがある。

「カーテンを揺らすのは風の仕事なんだ。」

「どうして かぜは しごとなんかするの?」

「誰だって仕事はするさ。お父さんは毎朝9時に会社に行く。それがお父さんの仕事。お前は早く寝て、明日の朝元気よく起きて幼稚園に行く。それがお前の仕事だ」

「わかってるわ、けど」

「まだお父さんの話は済んでないぞ。もし、風がカーテンを揺らさなかったら風は失業する。父さんが会社に行かなかったら父さんは失業する。そして、お前がたったいま寝に行かなかったら、お前はどうなるか分かるかね?」

「あたしもしつぎょうする?」

「おしりをぶつ!」

おしりをぶたれたら更に起きちゃいそうだなあと思いながらも、この会話のすぐあとフランシスは眠りにつくことが出来る。色んな不安におびえたあと、

「おおおとこだの、とらだの、こわいものや、むねがどきどきするようなものがいっぱいいて くたびれちゃった。あれは ただのがで がのしごとを しているだけよね。かぜと おんなじだわ。バタンバタン 言わすのが、がのしごとで、あたしのしごとは ねむること」

といいすっかり朝まで熟睡。このあたり、非常に教育的だなあとも思った。“仕事”をそのまま“役割”に変えても良い。大きな悩みはその自分の立ち位置しだいでなんてことなくなるものだから。フランシスに改めて、そう教わった気がした。

 

「そして、おかあさんが、あさごはんですよ と、よびにくるまで、ぐっすり ねむりました。」