58冊目『ゼラルダと人喰い鬼』
- 作者: トミー・ウンゲラー,たむらりゅういち,あそうくみ
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 1977/09
- メディア: 大型本
- 購入: 3人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
「とても残酷で、大ぐらい。朝ごはんに子どもを食べるのが、なによりも大好き。」
子どもを食う鬼と子どものゼラルダの、最終的には恋のおはなし。うさぎドロップかな。
色々感想はあるけれどまずはひとつ、お父さんはなんで、7歳くらいのゼラルダを一人で街に行かせたのか。しかもそのときの台詞が冷たい。「おまえがお昼につくってくれた、リンゴだんごを食べ過ぎたらしい。おまえ、わしのかわりに、ひとりで町へ行かなきゃなるまい。」
ひょっとしてこの段階で、鬼にしか旨いと思われない、ポイズンクッキング的何がしを、ゼラルダは身に付けていたのかもしれない。その後に一応ゼラルダの料理がぱっと並ぶページがあるのだけれど、文化の違いこそあれ、一つも美味しそうに思えなかったし。
有名なラストは自分にはちゃんとハッピーエンドにみえた。もしかしたら人喰いが遺伝されたとはいえ、今回のように変われるかもしれない。まあその変化のために何人の犠牲者が現れるか、と考えるとけして幸福な最後ではないけれど。どちらかというとただ「人を食わなくなっただけの人喰い鬼」を、町の人が歓迎している、みたいな描写のほうに欺瞞を感じた。これもさんざ言われていることなのかもしれないけれど、更正したらそれまでの犠牲者はチャラ、なんて、ヤンキーがまともになったから感動みたいなものだ。人死んでるし。
ウンゲラーはもう1冊読んだ『キスなんてだいきらい』のほうが圧倒的に良いと思います。
「ほら、ごらんのように、この家族は、すえながく、しあわせにくらしました。」