58冊目『ゼラルダと人喰い鬼』

 

ゼラルダと人喰い鬼 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

ゼラルダと人喰い鬼 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

 

「とても残酷で、大ぐらい。朝ごはんに子どもを食べるのが、なによりも大好き。」 

 

子どもを食う鬼と子どものゼラルダの、最終的には恋のおはなし。うさぎドロップかな。

 

色々感想はあるけれどまずはひとつ、お父さんはなんで、7歳くらいのゼラルダを一人で街に行かせたのか。しかもそのときの台詞が冷たい。「おまえがお昼につくってくれた、リンゴだんごを食べ過ぎたらしい。おまえ、わしのかわりに、ひとりで町へ行かなきゃなるまい。」

ひょっとしてこの段階で、鬼にしか旨いと思われない、ポイズンクッキング的何がしを、ゼラルダは身に付けていたのかもしれない。その後に一応ゼラルダの料理がぱっと並ぶページがあるのだけれど、文化の違いこそあれ、一つも美味しそうに思えなかったし。

 

有名なラストは自分にはちゃんとハッピーエンドにみえた。もしかしたら人喰いが遺伝されたとはいえ、今回のように変われるかもしれない。まあその変化のために何人の犠牲者が現れるか、と考えるとけして幸福な最後ではないけれど。どちらかというとただ「人を食わなくなっただけの人喰い鬼」を、町の人が歓迎している、みたいな描写のほうに欺瞞を感じた。これもさんざ言われていることなのかもしれないけれど、更正したらそれまでの犠牲者はチャラ、なんて、ヤンキーがまともになったから感動みたいなものだ。人死んでるし。

 

ウンゲラーはもう1冊読んだ『キスなんてだいきらい』のほうが圧倒的に良いと思います。

 

「ほら、ごらんのように、この家族は、すえながく、しあわせにくらしました。」