130冊目『さよならはくちょう』

 

ちいさなかがくのとも 3月号 (さよならはくちょう)
 

「つきのきれいなよる、みずうみのほうからはくちょうの

 コオ コオというこえがたくさんきこえました。」

 

諏訪湖で越冬する白鳥を見送るおはなし。色んな絵本の形がある。

 

「ちいさなかがくのとも」という雑誌形式の絵本から、 2009年のものを読んだ。雑誌の形なので本はぺらぺらだが、値段は他の絵本よりもずいぶん安い。対象も狭く3~5歳ごろまで。知育目的でも使えるので学校や図書館におろす用らしい。

しかし値段や形式が変わっても、そこに“感動”という信念があるから強い。今作は越冬してまた外国に飛んでいく白鳥を見送る女の子の目線を通して自然への感動をいざなう。

 

「このみずうみに いる はくちょうは、こはくちょうという はくちょうだと おしえてくれた おじさんです。」

おじさんは白鳥に餌を与えて、更に女の子に白鳥の色んな生態を教えてくれる。白鳥は冬の間、長野県諏訪湖で過ごし、春になると力を蓄え、遠い海へと旅立つ。春になったらさよならだ。

「ひとりで だいじょうぶなのかな。わたしは しんぱいになりました。」

白鳥のイラストはごく単純に、しかし正確に描かれている。以前読んだ白鳥の湖と違い、こちらはずいぶん生き物としての雰囲気があった。実際、あとがきには「写真を参考にしました」と書かれていて、このあたりも物語としての白鳥ではなく、“科学”の白鳥として捉えられている。だからこそ、最後のお別れは感動的だ。

 

「いよいよ きたに かえるんだ」

「はくちょうは みんなで ないて ざわざわしていました。」

隊列を組み大空を翔る白鳥は、今年の冬はこれでさよならだけれど、来年また帰ってくる。帰ってくるためのさよなら。夕空を飛ぶ白鳥の群れは何よりも美しく、雄大な自然だ。

生き物としての魅力に詰まった本だったので、帰るなら購入してうちに置いておきたい。というかこのシリーズがずいぶんいい。定期購読したい。小学校に戻るしか道はないのか。戻ります。帰ってくるためのさよなら。冬がきます。

 

「さよなら さよなら はくちょうたち。げんきでね。」