118冊目『バイト犬』
「こうして毎日 おそうじして歩いてる いまどきめずらしい犬だ」
バイト犬と名乗る犬のほんわかしたおはなし。ちょっとセクシャルなのはなんでだろう。
真っ赤な表紙が気になって読んだ。内容はどうということもないけれど、時々挟まるポエム的文章が楽しい。
「イカしてるあの娘は いつもしらんプリ
だけどさ ぼくはあの娘が好きだよ ほんとに
イカしてるあの娘は 波乗りが上手で いつもクール
こんど ぼくのホーキに乗って 海にいかない?
あー ドキドキしちゃうよ」
バイト犬はいつもまぶたを重そうにしていてとてもキュートだ。あと、ホーキに常にまたがっているのだけれど、なんとこのホーキからは水が出る。うれしいとちょっと立つ。股にこすり付けたりもする。ちんちんですか?ちんちんではないらしい。
「さかだちカバに会った 変なヤツだと思った」
お前も充分変な犬だよ、と思ったらページの隅にそう書かれていた。
「いっとくけど おれはバカじゃないぞ おれはカバだ わかったな」
今読んでいてもこれが何の感情を想起させるものなのか分からない。そういうものからずいぶん離れたところにこの文章はある気がする。
「ぼくは さかだちカバと 友だちになりたいと思った
また会う約束をして別れた」
バイト犬が向かう先にはなんだか美しいものがある気がする。分からないけれど、なんだかそんな気がしてしまう。それが本作の一番の魅力だ。
「ぼくのイカしてるあの娘に 花をあげよう
サンセットまで まだ間に合うから
いっしょに波乗りにいこうよ
陽が沈むとき あの娘といっしょにいたいよ
みんなオレンジ色になって
波の音を聞きながら あの娘の肩を抱くのさ」
犬ではなく狐につつまれたような気持ちになるが、最後の余韻はとてもいい。①、ってあるけど続きがあるのかな。うーん。
「……ベイビィ」