110冊目『うさこちゃんはじょおうさま』

 

 

うさこちゃんはじょおうさま (4才からのうさこちゃんの絵本セット2) (ブルーナの絵本)

うさこちゃんはじょおうさま (4才からのうさこちゃんの絵本セット2) (ブルーナの絵本)

 

「そのよ うさこちゃんは ゆめを みました。」

 

うさこちゃんが女王になる夢をみるおはなし。寝てみる夢のほう。

 

久しぶりにうさこちゃん。まだまだ読んでいないものがあるし、そのどれもがやはり新鮮で面白い。今回は夢のお話で一冊。

夢をみて、ああ現実はこうだったとか、明日に夢を生かそうだなんて、大人が考えそうな美談はまるでなく、ただゆっくり寝てゆっくり夢を見る。うさこちゃんは“大人の理想像的子ども”から遠く離れた、真の子どもな気がする。もちろん作者のブルーナは年とったおじさんだし、完全に子どもであるわけはないのだけれど、読んでいるうちは大人の影を考えずに済む。読書体験とはこうあるべきだろう。

 

うさこちゃんは夢で女王さまになった。この女王様はとても素晴らしい人で、人々の声援にはこたえるしテープカットなどのイベントごとにも顔を出す。

「でも、なにか わるいことが おこって だれかが かなしんで いるとき

 こんなふうに そばに いって なぐさめるのも じょおうさまです。」

泣いている人の隣に、いつもの顔で寄り添ううさこちゃん女王。ちょっと怖くもみえる。

 

いつもは背景色に異常なこだわりを見せるブルーナが、この夢のなかでは全て真っ白の背景を通している。ブルーナにとっての背景は、光なのかもしれない。その証拠に朝、うさこちゃんが目覚めると部屋の背景はまっ黄色。光の色だ。夢の中はどんなに幻想的でも光はないから、まっ白。 これだけ特徴的な作品郡だと、そんな風に研究しながら読んでいくのも面白いかもしれない。自分には学がないのでしないけども。

 

相変わらずの面白さと毎回訪れる新鮮さ。子どものみる夢はすぐに忘れてしまうものかもしれないけれど、大事に、たとえばこの絵本のように描いていきたい。

 

うさこちゃんは ゆめで じょおうさまに なって おもしろかったな と おもいました。」