107冊目『しにがみさん』
「ほんとに、しんじまいたいよ。」
落語『死神』を、分かりやすく絵本にした本。死神が見えるようになった男がその力を使い金儲けをするようになるおはなし。
元の落語を知っていたので、絵本としての見所だけメモする。最後の方、原理に逆らった方法で死神をはらい、暗くてせまい地の底へ連れて行かれる男。天の川のような道をいくと、そこには大量のろうそくが置かれていた。
「ろうそくの あかり 一本一本が ひとのじゅみょうだ。」
「このいせいよく もえているのがあるだろう。こいつが おまえのじゅみょうだったんだ。それを おまえは 五千両のかねに めがくらんで、うりわたしてしまったんだ。」
たくさんのろうそくのなかに見える光。『しにがみさん』において、死神はとにかく人に優しい。優しいからこそ、死神は生きている人間の上に立つ存在になっている。オチはある種悲劇的だけれども、その暗闇と光の明滅が無常を誘う。
まえがきにある柳家小三治さんの言葉がこのお話の全てだ。
「落語は、落語家の人間性が反映され、また、時代によってかわっていきます。そして、悲劇より喜劇がより難しいのですが、笑っておしまいだけではなく、生きていくうえでの喜び、奥深いものを伝えられたらと願っております。」
「はくしょん」