103冊目『まよいみちこさん』
「みちこさんでも まよわない わかりやすい ちず」
地図を手に友だちに会いにいったみちこさんが、迷いに迷って異世界を通り過ぎるおはなし。 迷路を見るとまず迷ってみたくなる人へ。
友だちのまるみさんからもらった地図を手に駅を降りたみちこさん、はじめの目印のあかいとりをみつけて走り出す。
しかし絵をよくみてみると、みちこさんはこの1ページ目から既に道を間違えていることに気づいた。左のほうにあるのが喫茶“あかいとり”。みちこさんは、空を飛ぶあかい鳥をみて、右の道にいってしまった。一体どこに動き回る生き物を目印にした地図を書くやつがいるんだ。みちこさん、なかなかひどい。
「はじめて いく ところって、なんか わくわくするな。まるみさん、こんな ところで くらしているのね。」
既に大幅に道を間違えてはいるものの、まだ能天気なみちこさん。地図に描かれていない川沿いを行き、地図に描かれていないジャングルを進む。途中みつけた「かものはし」という素敵な橋は、さすがに渡らない淑女のみちこさん。うーん。
ジャングルのなかに入るといよいよ異世界。大根や樹に顔があり、魚が浮き、ラフレシアとサボテンが共生している。
「ふしぎな ふんいきの すてきな ところね。」
じゃない。
「まるみさんが ときどき おべんとうを たべる こうえんって ここかなあ?」
食べれない。下手したら食べられてしまう。
こうえん(=ジャングル)を抜けたみちこさんは、花びらのような形になっている道に出る。
「いつも おもうけど、ちずって あんまり やくに たたないものだよねえ。」
そろそろツッコミ役がほしい。ジャングルからうっかり連れてきた猿を肩にのせ、みちこさんは更に迷いつづける。
絵の田中六大さんを目当てに読んだので、文章にも描かれていない絵だけの遊び心がめちゃくちゃ楽しい。迷いこんだ先もむちゃくちゃでいいけれど、はじめのページで屋上にいる、バドミントンをしているはげたおじさん二人など、別に描かなくてもいいものまで緻密に描かれている。これは絶対子どもが好きだろうなあ。最後のほうの不穏な展開も、それを回収しないのはどうかと思うけど好きです。
つまり元の世界から持ってきたたいやきが、形を変えてみちこさんを異世界から救い出してくれたということなのだろうか。猿印のたいやきってなんだよ。「え、そうなの?やったー」で終わらせるみちこさん豪傑。まるみさんはなんでアフロなの?
とまあそれはさておき、本のカバーの部分には、みちこさんとまるみさんを繋ぐ迷路が描かれていてこれもうれしい。思わず色鉛筆で書き込みたくなった。色々おすすめです。
「みちこさん おそいから、まよってるのかも、って みにきた」