86冊目『まばたき』

 

まばたき (えほんのぼうけん67)

まばたき (えほんのぼうけん67)

 

「しーん」

 

まばたきをするほんの一瞬の世界のおはなし。時はまばたきのよう。

 

酒井駒子さんの絵を堪能できるうえに、少女が少女でなくなる瞬間を見れる1冊。少しゾクッとした。それが恐怖なのか感動なのかはよく分からない。

 

まばたきをする瞬間に蝶が花から飛び立つ。

まばたきをする瞬間に鳩時計から鳩が出る。

まばたきをする瞬間に紅茶に砂糖が溶ける。

 

その瞬間と同じ瞬間、少女も一瞬で老女になる。その刹那は大きなものからみたら確かに一瞬なのかもしれないが、確かに“死”に進む一瞬だ。ほんのまばたき一つですら、私たちは死に近づいている。感覚としてはゴーリーの絵本と同じ鋭さだに思えた。

 

表紙の少女の顔を何度も見る。留め置きたい一瞬だけれど、時は常にまばたいている。もしかしたらその流動する時間のなかで、唯一動かずにいられたものが本なのかもしれない。美しい1冊。

 

「みつあみちゃん」