85冊目『よるのかえりみち』
「よるって とても しずかだな いつもと ちがって だあれも いない」
帰り道、いろんな人の夜を思うおはなし。街燈はなんで青いんだろう。
母親に抱かれながら帰る子どもは、夜の帰り道の中でたくさんの発見をする。話し声が聞こえたと思えばなんだか美味しい匂いがして、くつろいでいる人がいる部屋の隣ではにぎやかなパーティが行われている。
「さよなら している ひともいる」
家につき布団のなかでも、帰り道にすれ違った人のことを考える。
「きょう いちにちが おわっていく そろそろ ねる したくを する じかん」
子どものなかでは確かに終わりのこの時間に、何かを始めようとする人の音も聞こえる。その人はいまから最終電車に乗って、遠くの街へいくのだろう。偶然にも先ほど“さよなら”をしていた人と同じに見える。
最後は「おやすみなさい」でしめられるこの1冊。
色んな窓に、さまざまな帰り道がある。せめて帰ることだけはマイナスの感情で行われないように。今日観た映画の『きみはいい子』を観ていてもそう思った。
「いつものよる とくべつなよる みんな いえに かえって ねむりにつく」