84冊目『ふたりはともだち』

 

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

 

「つまり、ぼくたちの あたらしい 一ねんが また はじまったって こと なんだ。がまくん。その ことを おもって ごらんよ。」

 

がまくんとかえるくん、その友情物語の1冊目。

 

前回のように長くなってもあれなので、この本で一番有名な『おてがみ』の感想だけ。

『おてがみ』

玄関で悲しそうな顔をしているがまくん。なんでも「いまはおてがみを待つ時間」だそう。

「そうなると いつも ぼく とても ふしあわせな きもちになるんだよ。」

どうして、と聞くかえるくんにがまくんは言う。

「だれも ぼくに おてがみなんか くれたことが ないんだ。まいにち ぼくの ゆうびんうけは からっぽさ。てがみをまっている ときが かなしいのは そのためなのさ。」

 

手紙という、好意の交換のような手段。がまくんは、それをもらったことがない。もらったことがないのにいつでも待っているという。そんな乙女のようながまくんにも、かえるくんは機転を利かせてがまくんを元気付けようとする。

かえるくんは急いで家に帰り、がまくんへの手紙を書いてそれを知り合いのかたつむりくんに渡す。

「おねがいだけど、この てがみを がまくんのいえへ もって いって 、ゆうびんうけに いれてくれないかい。」

がまくんの家に戻るとがまくんはふてくされて寝ている。だいたいいつもがまくんは不貞腐れている。

「ぼくに てがみを くれる 人なんて いるとはおもえないよ。」

こんなに素敵な友人がいるのに不貞腐れて寝てばかりのがまくんに、苛々すると同時に共感を覚える。 かえるくんは何度も窓を覗いて郵便受けを確かめる。かたつむりくんは遅い。なぜならきっとかたつむりだからなのだけれど、かえるくんは今か今かと待つ。

「きっと くるよ。」

「だって、ぼくが きみに てがみ だしたんだもの。」

きみが?と驚くがまくん。「てがみに なんて かいたの?」と聞くとかえるくんはこう答えた。

「ぼくは こう 書いたんだ。『しんあいなる がまがえるくん。ぼくは きみが ぼくの しんゆうで ある ことを うれしく おもっています。きみの しんゆう、かえる』」

 

とてもいい手紙だ、とこぼし2人は玄関で手紙が来るのを待つ。

「2人とも とても しあわせな きもちで そこに すわっていました。」

待つ時間は一人だと孤独だけれど、二人なら幸せな時間になる。それは二人がともだちだからで、この気持ちはきっと永遠だ。

 

友情のお話というか、「人が人を思うこと」の全てが、このがまくんとかえるくんシリーズには詰まっていると思う。これもやっぱり宝物です。

 

「てがみを もらって、がまくんは とても よろこびました。」