79冊目『ふたりはきょうも』
- 作者: アーノルド・ローベル,三木卓
- 出版社/メーカー: 文化出版局
- 発売日: 1980/08/17
- メディア: ハードカバー
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「これで いい きもちになった。ぼく もう ゆうつじゃないぞ。」
がまくんとかえるくんの友情物語、永遠のおはなし。
あまりに素晴らしくていまひとつ言葉にならないけれど、メモは残しておく。がまくんとかえるくんのシリーズは全て何篇かの短編で成り立っていて、今作は5つのおはなしが入ってある。
『あした するよ』
がまくんは今日をのんびり過ごしたくていろんなことを明日に回そうとする。しかしそうすると明日のことがだんだん憂鬱になってくることに気づいたがまくんは、少しずつ少しずつ今日やるべきことをやり始める。
「もし いま すぐ ぼくがだよ、いすの ほこりを はらって まどを みがいて うえきに みずを やれば、あしたは もう そんなこと しないで いいんだろ?」
「そうとも。それ みんな しなくて いいんだ。」
かえるくんはがまくんに、明日をのんびり過ごすために何をしたらいいのかを教えてくれ、がまくんはそれをやることでだんだん気持ちが晴れていく。 おどけた終わり方ではあるものの、これも結構大切な2人の友情話だと思う。
『たこ』
がまくんのあげる凧は何度やっても高くあがらず地面にへばりついてしまう。泣きつくがまくんにかえるくんは何度も「もう1回だけやってみようよ」といった。何度目かの挑戦で凧は、バカにしていたこまどりたちにも届かないほど上空に飛び上がる。
「やったぜ!」と叫ぶがまくんにかえるくんが一言。
「はしってみても だめで、はしって ひらひらさせても だめで、はしって ひらひらさせて ぴょんぴょん はねても だめでも、それでもね、はしって ひらひらさせて ぴょんぴょんして おおごえ だせば、それで うまくいくって ぼくには わかっていたんだよ。」
友だちに自分を信じてもらえて、叶うことの喜び。それから2人は高く高く上がった凧をずっと見守っていたようです。
『がたがた』
幼いときの怖かった思い出を話す2人。だんだん相手にも恐怖が伝わってきて、2人でがたがた震えだす。
「これ きみの つくりばなしかい?」
「そうかもしれないし ちがうかもしれない。」
共有した恐ろしい話は確かに怖いけれど、最後は、その感覚を共有したことが嬉しくて、なんだか暖かい気持ちになる。読んでいてこのあたりで「ええいイチャイチャしやがって!!」となるくらいの仲良しっぷり。足がお互い触れ合っているように見えるんですよね。良いですね、とても良い。
『ぼうし』
がまくんの誕生日にかえるくんがあげた帽子は、少しがまくんには大きくて、目をすっぽり覆い隠してしまいました。視界もほとんどないのでこけたりぶつかったり穴に落ちたりするがまくん。
「きみの すてきな おくりものを、かぶることが できないんだ。かなしい たんじょうびに なってしまったよ。」
そんながまくんにかえるくんが提案したのが、「なにかとても大きいことを考えて、頭を大きくすること」。突拍子もないその提案にも「そいつはいいかんがえだ!」となる愛しいがまくん。さっそく帰って大きなことを考えます。
がまくんが大きなことを考えながら眠っているあいだに、かえるくんは帽子を小さく作り変える。
「がまくんの おたんじょうびの つぎのひは、とても たのしい ひに なりました。」
『ひとりきり』
ラストのおはなし。ついにあれだけ一緒だったがまくんとかえるくんだけども、突然かえるくんは一人きりになりたいとの書置きを残してどこかへ消えてしまう。
「かえるくんは ぼくと ともだちなのに。どうして ひとりきりに なりたいんだろう。」
かえるくんは一人きり、川の真ん中の島に座っていた。そこに駆けつけようとするがまくんに、川にすむ亀がいう。
「かえるさんが ひとりきりになりたいなら、どうして そっとしておいてあげないんです。」
君のいうとおりかもしれない。かえるくんは、もうぼくのことなんかいらないのかもしれない。でも、かえるくんの姿を捉えた瞬間、がまくんは叫ばずにはいられなかった。
「ぼくの した くだらない こと みんな ごめんね。ぼくの いった つまらないこと みんな ごめんね。おねがいだから また ともだちに なっておくれよ!」
余りの勢いに川に墜落してしまうがまくん。それをかえるくんは笑いながら助けると、妙に元気なかえるくんがこう話してくれた。
「ぼくは うれしいんだよ。とても うれしいんだ。けさ めを さますと おひさまが てっていて、いい きもちだった。
じぶんが 1ぴきの かえるだ ということが、いい きもちだった。
そして きみという ともだちが いてね、それを おもって いい きもちだった。それで ひとりきりに なりたかったんだよ。なんで なにもかも みんな こんなに すばらしいのか その ことを かんがえてみたかったんだよ。」
ああ、そうだったのか、とがまくん。2人でおひるごはんを食べながら、永遠を思うがまくんとかえるくん。2人はいつまでも親友だった。ふたりはきょうも、友だちだった。
うーん、書いてるうちにまた涙がこみ上げてくる。絵本すごいなあ。すばらしいなあ。良い夏だ。自分にも早く、がまくんとかえるくんのように思いあえる人が出来たらと思う。そしてそれはそう遠くないと思うのでした。
でも、いまは きみが いてくれて うれしいよ。さあ ごはんを たべよう。