71冊目『モモ』
「モモには 空の向こうに ともだちが いる」
少しおバカな犬のモモが、年を取っていくおはなし。ミヒャエル・エンデではない。
余り得意ではない“犬の一生”の本でこれほどまでに好きというのは、もうこの作家さんが好きなんだと思う。あとがきまで読むべき1冊。
「モモは 時々 ひとりでいるとき なんにもない空を見上げて べろを だして しっぽを ふっている」
お手もお座りも出来ないモモは、その代わり飼い主がどんなときでもいつもバカみたいにしっぽをふって空を見ている。ときどきこっちをみて顔を舐めたり靴を壊したり、散々だけれどそれでも変わらずそこにいる。飼い主にとって、モモの存在は変わらない日常そのものだ。
「うれしくても かなしくても モモはおなじ しっぽをふって なめる」
思春期、成長していく飼い主にとって、変わらずそこにいてくれるモモの存在は救いだった。どんなときも、「モモ!モモ!」と呼べば「わんわん わんわん」と近づいてくる。
そんなモモは、「わたしより はやく 年を とっていく」。
いなくなった、なくなってしまった日常を、犬小屋にもたれかかる飼い主の絵だけで表現するラスト。やっぱりおーなりさんは無言の使い方がとても巧い。漫画を描いてきた人だからなのか。そのあとに聞こえる声も、何の仕掛けもないからこそ胸に響く。犬に喋らせてどうこう説明する志の低い絵本とは違うものを感じた。
あとがきはいつものとおり、まるで詩のような言葉が並ぶ。
「愛しいのは、当たり前のように近くにあったひとつひとつ。取るに足りない日常の一瞬。命の正体は、そんなものの中にあるような気がするのです。」
おーなりさんの本は今度まとめて買っておこうと思う。自分の人生に必要。
「帰ろうか、モモ」