64冊目『ロボットのくにSOS』
「ルネくんの おもちゃのロボットが うごかなくなってしまいました。」
ルネくんと変わり者のフープはかせの元に、ロボットのくにから助けを求めるゼンマイロボットがたずねてくるおはなし。
たむらしげるさん、「少年時代に夢見た空想世界をテーマに、さまざまなメディアを通して作品を発表」といわれているとおり、本作は絵本というよりコミックに近い。 コミックの文法で作られた、ちょっと不思議な国の物語。
影の角度で扉の位置が変わるひどけいいわ、デンキヒトデがまるで流れ星のように空と水面を駆け巡るちていのみずうみ、穏やかな竜の住むおおきなきのこのもりと、さまざまに美しく、わくわくの溢れている世界をルネくんとフープ博士は冒険する。その見栄えの素晴らしさはもう文章化できるものではないので読んで見て覚えておくしかない。
最後に出てくるロボットのくにが、「まるでじかんが とまっているようだ」と言われていたのは、自分がたむらしげるさんを知るきっかけになった『惑星9の休日』を思い出した。はじめはその人個人だけの世界だったのかもしれないけれど、発表して世にでて、たくさんの人に影響を与えた段階で、あなただけの世界ではないのだ。それは時々悪手としてもとられる考えだけれど、今は大切なことのように思える。
「もう みんなの スピードに ついていけません」
は、悲しい言葉だけれど、だからといって全部がなかったことになるわけではない。部品一つ、ぜんまい一つが国や心に残っていれば。柔らかな感動の中この絵本は終わる。おやすみルネくん。
「さあ、かえろう。きみの ロボットを しゅうりせんとな」