57冊目『ぼくがラーメンたべてるとき』
「ぼくがラーメンたべてるとき、となりでミケがあくびした。」
日本でラーメンを食べる“ぼく”の、隣の隣の隣の隣の男の子のおはなし。
本は色んな場所に連れて行ってくれる。旅行雑誌をみて実際に旅行に行ったつもりになれるし、異世界ファンタジーを読めばその異世界に行くことが出来る。絵本もその魔法は使えて、今絵本を読んでいる君を、遠く遠くの外国で、今にも息絶えようとしている男の子の前にまで連れて行ってくれるのが本作。例えばそれはぼくがラーメン食べているような、なんでもない日常の一瞬。
本当に何の予備知識もないまま、タイトルがいいなという気持ちだけで読んだので、子どもが赤ん坊を育てているシーンあたりからページをめくれなくなった。また絵の雰囲気もとてもよくて、ラーメンを食べたりテレビを見たりしている子どもたちの日常は永遠に続くのかと思われる。隣の、向こうの、そのまた向こうの国では、そんな日常はないというのに。
「外国で飛行機が落ちました ニュースキャスターは嬉しそうに“乗客に日本人はいませんでした”」
「遠い国の不幸せ 対岸の火事なのか」
「誰かの願いが叶う頃 あの子が泣いてるよ」
と色んな歌にもなっている当たり前の感情を、どっかで忘れたりなかったことにしていないか。風が吹いている。
風が吹いているとき、またあなたも「他人事」ではないのに。でもラーメンは食べろ。ラーメンが美味しい日本で食べろ。考えることをやめないように。
と重たい気持ちにはなったものの、その重たさに充分見合う本だと思う。おすすめです。
「かぜが ふいていた…。」