55冊目『しろおうさまとくろおうさま』

 

しろおうさまと  くろおうさま (PHPにこにこえほん)

しろおうさまと くろおうさま (PHPにこにこえほん)

 

「しろおうさまはくろいものがだいきらい。くろおうさまはしろいものがだいきらい。」

 

白を愛する王様と黒を愛する王様を、突然現れた七色の小人が塗り替えるおはなし。

 

ごく個人的な見解としてはお話をどうしても認めるわけにいかなかったのだけれど、絵やお話はとてもハイレベルで見ごたえのあるものだった。灰色の森が小人たちにだんだん塗り替えられていく様までは気持ちがいい。そこまでは。

白王様にもそれなりのこだわりがあったろうし、黒王様は代々続いてきた伝統としての黒だったのかもしれない。だから小人たちが無遠慮に国までおのおのの色で染め上げたとき、絵本を読んでいて初めてくらいの強烈な怒りを覚えた。虹色になった森をみて感化される、程度でよかったじゃん。自分から進んで塗り替えさせてくれよ。個人的に灰色の思考も物語も愛するものとして、一生好きにはなれないだろうなと思った。

けれど真っ黒いところに虹色が飛び交うのはみていて綺麗だし、白も右に同じ。思想の話でなければこんなに美しいものはない。で、少なくともそんなことは考えずに読むことも出来る。面白い読書体験だった。どの立場から読むか、そろそろスタンスをはっきりさせておきたい。

 

 「それからというもの、ふたりのおうさまは、おたがいのおしろをいったりきたりして、いつまでもなかよくくらしたのでした。」