51冊目『いやいやえん』

 

いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ)

いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ)

 

「『はるのせんせい ぼくは、もうなんでもひとりでできるから、ほいくえんにいってもいいでしょう。やまゆりまち やまのこぐ』」 

 

とてもわがままな幼稚園児しげるちゃんと、それを取り巻くちょっぴり不思議な世界のおはなし。

 

51冊目にして少し範囲を広げようと、児童文学に手を出してみた。これも絵本の雑誌等でよく名前を見る超有名作品。さすがに面白かった。

大人の想像する幼稚園児や子どもではなく、本当に子どもが考えて動いているようにみえる。しげるちゃんは本当にわがままな子で、最後の1篇「いやいやえん」では遂にお仕置きされるのかとはらはらした。お仕置きはされたけどそこまでハードな展開にならなくてよかった。

唯一ハードだなあと思ったのが「おおかみ」という1篇。これも狼側にとってハードなオチだけれど、それでも途中まではしげるちゃんが食されようとするのを読むという安心できない展開。その後の「山のぼり」なんかでは、しげるちゃんは山の鬼に見入られ助けてもらうし、一体しげるちゃん何者なんだ。そしてなんの話なんだこれは。

そんなしげるちゃん、中盤の「やまのこぐちゃん」ではこぐちゃんこと小熊にこっそり卵焼きを分けてあげる男気も。その上で最後の「いやいやえん」だ。自分はこのお話の全部を読み込めた気はしないのだけれど、最後の一言にじんときた。嫌でつまらなくて勝手のきかない世の中だけれど、世捨て人のように生きるよりは俗世にまみれて生きたほうがましだ。大きくなれよしげるちゃん。

 

「あしたになったら、ちゅーりっぷほいくえんにいくんだ。ちゅーりっぷほいくえんには、ほしぐみがいるし、ばらぐみがいるんだもの。それに、はるのせんせいと、なつのせんせいがいるし……やっぱりおもしろいよ。」