26冊目『はるってどんなもの?』

 

「きょう、エリちゃんが『もうすぐ はるだね』っていったんだ。はるって、どんな ものだろう?」 

 

カーディガンのボタンの5人兄妹が春がなんなのかを話し合うおはなし。

すっげーよかった。著者のあさのますみさんといえば、中学1年生の頃からこのかたのラジオを聴いている自分にとっても思い入れの強い声優さんなのだけれど、ここ数年取り組まれている作家活動に関しては同人誌の『それが声優』を少し読んだくらいで、今作で初めて、あさのますみ先生の絵本を読んだ。そして、やっぱり“成立感”のとても強い人なのだと再確認。よく出来上がっている。

 

カーディガンのボタンであるパッパ、ピピ、プー、ペーペ、ポッポの5人兄妹は春を見たことがない。見たことがないから人から聞いた情報で、想像して作り上げるのだけど、その姿は春とはかけ離れた姿になってしまう。春には姿はない。けれど、物語の後半、春は姿となって現れる。長い冬が終わりその春が“くる”瞬間はとても感動的。そして物語として“成立”していると思う。決して、絵本だからオチはなくていい、オシャレ映画だから意味はなくていいとか、言い訳に逃げることなく、それぞれの春を見つけるその姿勢が素晴らしい。

荒井さんの絵も素敵。自分は今のところ『あさになったのでまどをあけますよ』の印象が強い人だったので、お話にあわせて雰囲気も変え、また色合いがページをめくるごとに楽しい。成立しているお話と、表情豊かなイラストがマッチしている。調べるとあさの先生のデビュー作もこのコンビのようなので、今度また読みたい。

語り口も絵もいわゆる子ども向けの絵本なので万人におすすめ、とは言わないけれど、声優浅野真澄を少しでも好感持って受け止めている人は、この絵本でまた浅野さんを好きになれると思う。ハッピーな物語です。

 

「あたたかくって、いい においが して、くると うれしく なる。はるって、このこと だったんだ!」