22冊目『この世界いっぱい』

 

この世界いっぱい

この世界いっぱい

 

「この世界いっぱい、ひろびろと、どこまでも」

この世界に連なる、たくさんのあなたとわたしのおはなし。

はじめは貝や自然、空や雨、音がこの世界いっぱいに広がっていく瞬間を絵に切り取り語っていく。だんだんそれが自分たちの身近にあるものになっていき、そして絶望的な状況すら広がる自分たちの周りを愛する。

もしかして、と思って発行日を見てみたら、2011年4月の25日、震災後すぐの絵本である。ここ10年の絵本を読むにつれ、特に子どもたちのものである絵本に震災という巨大な絶望が影響を与えないわけがなかった。希望の絵本としては前回の『あさになったのでまどをあけますよ』も震災後の本。

子どもは一番分かりやすい部分をつまんで理解するのだけれど、だからといってものづくりの段階で単純なものを作っていいという話にはならない。受け手側の考えを勝手に想像して やたらめったらに思想を押し付ける、というのは、たとえそれが子どもにしか届かないものだとしても許されざる蛮行だ。だけども作り手が今、この瞬間に、受け手である子どもたちに何を与えられるのか。そこを想像して、独りよがりでも希望をつむぐことは、自分はとても大切なことだと思う。

すごく好きな話に「子どもはチワワとゴールデンレトリバーが同じ“犬”だということが見分けがつかない」というものがある。知識として知っていなければ理解できないことはあるけれど、この世界いっぱいのそれらは自分たちが知ろうとするまで待ってくれるものばかりだから、チワワとレトリバーの違いも、希望と絶望の違いも、こういった絵本で自然に知るようになればとてもいいと思う。

もちろん希望の絵本は大人にも届く。ちょっとサイズも大きい本だけれど一読の価値ありです。

 

「この世界いっぱい すべてのものが すべてのものが あなたとわたし

 希望すること 平和であること 愛すること 信頼すること

 この世界いっぱい わたしたち みんな」