このマンガが(俺のなかで)スゴい!2014

今世ばんは。年末年始、上半期下半期の終わりにしかこちらに現れない季節の風物詩のようなブログがやってまいりました。今回は前年に続いて、

 

このマンガが(俺のなかで)すごい!2014

をやりたいと思います。ちなみにこちらのブログではこの表記での選定になりますが、後日ツイッターでは#俺マン で呟こうと思っております。去年はそういう皆で集計するやつとかやだよって思ってたはずなのに、人間一年経てば変わるんですなあ。

 

さて、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、さっそく今回もランキング形式で、絞りに絞ったベスト10を発表させていただきます。ではまず第10位!!!

 

第10位『生まれる価値のなかった自分がアンナのためにできるいくつかのこと』

 

 世にタイムリープもの数あれど、それらは全て青春を謳歌するために舞い戻る、大人の理想的な綺麗な青春モノでしかなかった。しかしこの漫画はわざわざ大人から子供を汚しに、自分の輝かしき青春を真っ黒に染め上げに行く、『無邪気の楽園』とは真逆のおっそろしいサスペンスです。

あえて言うならば、「なんでこの作品を生もうと思ったのか」が全く分からない作品なのだけど、そんな作品が確実に僕らの心のどこかに入り込んでくることがやはりコワくてたまらない。気づけば主人公の動向にハラハラしながら毎月楽しく読んでおります。連載ではついに人が死に、生まれる価値のなかった主人公はさらにクズへと落ちていく。3巻にて完結するようで、その行く末が大変楽しみであり、また怖くもあります。出てくる女の子は皆可愛いです。そして誰もが自分にとってのアンナを思い出すでしょう。

 

 

では第9位。

 

第9位『佐久間まゆをトップアイドルにしないと俺が殺される』

 

 

 

 こちらは同人誌からのランクイン、出す本出す本がまあ名作だらけの鈴木フルーツさんの夏の新刊です。

そういえば僕は宇宙飛行士になりたかったのだった。でもその夢を忘れていたのは、どこかのサブカルバンドのいう「大人になったから」ではなく、「宇宙に興味がなくなったから」でもなく、手近に叶えられる小さな夢をいっぱい見つけたからなんだなあと思う。例えば自分の応援しているアイドルが武道館に立てますように。例えば敬愛している阿部共実先生が何らかの賞をもらえますように。自分では何一つ努力もしていないしいうなれば他人の功績なのだけど、そういった“夢の代理出産”を幾度も経験することによって、僕らは宇宙飛行士になる夢を忘れて、自分だけの宇宙を見ることになる。人が何かを応援したり愛したりすることって、そりゃ押し付けや依存もあるだろうけれど、最初はその“夢をあんたに叶えてほしいんや”から始まるものな気がします。

 

そしてそのメカニズムが一番多様されているのが現代のアイドルであり、そこを強靭な物語で描いた同人の枠に収まらない漫画が、今作の『佐久間まゆを(略』だと思います。同じくアイドルを描いた師走の翁先生の『アイブカ!』と最後まで悩んだのですが、自分はこの佐久間まゆ、そして牧野由衣に対して多少なりとも思い入れがあったので、今回はこれを9位とさせていただきました。

ちなみに本作では牧野由衣の楽曲の『スピラーレ』が引用されていますが、僕の個人的なおすすめは『ふわふわ♪』という曲です。少し本作でのままゆとは印象の違う曲ですが、名曲なので参考までに。

ちなみに僕の中でのこの作品を読みながら聞きたいBGM第1位は、andymoriの『宇宙の果てはこの目の前に』でした。これもご参考までに。

そういやもう一つの忘れていた夢は生徒会長になることなんだけど、これはいつかどこかで叶うのか、もう叶えなくてもいいのか。

 

「俺は宇宙飛行士になれなかった。でももしかしたら、あのころあこがれていた世界が今目の前にあるんじゃないかと思うときがある」

 

第8位『ちーちゃんはちょっと足りない

 

 

本家このマンガがすごい!でも一位。詳しい説明はそちらのムック本を読んでいただくかもう普通に買っていただくかして、これほどまでにすごい、という形容詞が似合う漫画はもう今後出ないかと思われます。それほどまでにすごい。ではなぜ8位なのか。こっから余談なので読まなくても大丈夫です。

 

自分は今後、人生のなかでもっとも好きな漫画はなに?と聞かれてもハチミツとクローバーと答えるしかないそんな人生なのですが(もちろんその人生を誇らしくも思っています)、去年の春、ある決意を抱えて実家の近くだった大阪を離れてあるシェアハウスに住んでいた時期がありました。結果それは半年ほどでまた大阪に舞い戻るという情けない結果になってしまったのですが、そのときリュック一つでふらふらしていたとき、唯一持っていった漫画本が『空が灰色だから』でした。その不安定になるお話と時折訪れるキュートな結末に、極貧生活を送りながらも日々癒されていたのです。だから自分は、人生でもっとも好きな漫画はハチクロですが、あの半年に関しては阿部先生に一番心を救われていたのです。そんな阿部先生の新作ということで、掲載誌のもっと!も早々に買い集め、単行本の発売を今か今かと待っていたのでした。

ちーちゃんはちょっと足りない』が物語として評価され報われることで、自分のあの半年間を含む、20歳を越えてからの人生が報われた気がします。これが俗にいう“夢の代理出産”です(別に言わない)。

「ああなんだか私たちって」

 

なんだか楽しくなってきました。では第7位。

 

第7位『フラグタイム

 

フラグタイム 2 (少年チャンピオン・コミックス・タップ!)

フラグタイム 2 (少年チャンピオン・コミックス・タップ!)

 

 時間を止める能力を持つちょっと変態的な女子高生が今日も今日とて可愛い女の子のパンツを覗いていると、その可愛い女の子から「なにしてんの?」と声をかけられてーー!!

 

第一話のあらすじを書くとホントにこんな話だから不思議で仕方ないのですが、ここから「人を好きになるってどういうこと?」「人と関わっていくうえで避けられないことってなに?」「自分を嫌わないで生きるには?」とコミュニケーションにおける問いのほぼ全てをやってのける、ちょっと化け物じみた全2巻の物語です。しかも絵が今ドキで百合モノだから普段芳文社にばかり金を使っているお前らに朗報!大丈夫、俺も似たようなものだよ、なわけです。

誰かを好きになりたかった、誰かに好きになって欲しかった。恋愛とはかくも凸凹の関係だと素人童貞のはらひろさんも言いますが、その凸と凹は男女のそれだけではなく、こういった心の凸凹が交わるときにも当てはまるのです。だから、自分は百合といわれる文化がまだ好きでいられます。逆に「女の子なら誰でもいい」みたいな論調で語られる百合モノには唾を吐きかけます。男女だろうが女女だろうが男男だろうが、「あなただからいい」であってほしい。まあ童貞のうっるせえ小言なんか読まずにみんな早く読もう。この漫画が一位です。嘘です。

 

「でも私はどう思われてもまたは思われなくても大丈夫なんだ。だってこの動き出した世界には」

 

第6位『福島鉄平短編集 アマリリス

 

アマリリス (ヤングジャンプコミックス)

アマリリス (ヤングジャンプコミックス)

 

 

少年ジャンプにて連載された『サムライうさぎ』で一世を風靡した福島先生の6年ぶりの新作は、少年がへんたいのおじさんに淫らな接客をしてお金をもらう、「きたない」「よごれている」男の子の物語でした。

普段ミラクルジャンプは買わないのだけど、偶然コンビニで見かけてその場で購入、読んでちょっとその場で動けなくなるほどの衝撃を受けました。その後も発表されていく読みきりに心うたれながら、ついに今月短編集が二冊発売され『アマリリス』はそのなかでも青年誌に掲載されたものを集めた、少し大人向けの漫画です。

もともと少年誌作家だということもあり話の突飛さばかりが注目されつつありますが、僕はこんなにも漫画を読むということの面白さを突き詰めた短編集は、ここ十年単位で出ないと思っています。練られた構成にとうの立つキャラクター、印象的なコマ割とカラーの美しさ。ただ好きなだけでも充分なのに、決して難解ではない。むしろ万人に伝わる漫画という言語だと、なぜこの漫画が100万部行かないのか不思議でならないほどです。

 

お気に入りの話は「ルチア・オンゾーネ、待つ」なんですが、こちらも女の子と女の子がその存在の凸と凹を埋めあう話でしたね。その系統でいうと今年は『ミミクリ』、『レイルオブライフ』、『橙は、半透明に二度寝する』、『さくらの園』と実に素晴らしい漫画が多かったです。別に某雑誌だけが嘘とかそんなことはないはずなんだけどなあ、被害妄想じゃないかなああれ。

 

では後編に続きます。

 

 

橙は、半透明に二度寝する(1) (講談社コミックス)

橙は、半透明に二度寝する(1) (講談社コミックス)